高知県東洋町の郷土料理”こけら寿司”は、ほぐした焼魚の身を入れたゆず酢をたっぷりと入れたご飯の上に、しいたけやにんじんを散りばめ、その上にさらにご飯をのせて、具材を散りばめてと、幾重にも重ねて作る押し寿司の一種。その何層にも重ねる様を「喜びを重ねる」にかけて作られたことから、祝い事や神祭りには欠かせない料理になっていったようだ。大きなものは華やかで迫力があり、外観にかなりのインパクトがあるが、それも地元のおいしい自慢のお米があってこそ。こけら寿司はお米が主役の郷土料理なのだ。
高知県の代表的な食文化の一つに「すし文化」があります。そのバリエーションは豊富で、一般的な握りずしはもちろん、「押しずし」や「姿ずし」、「野菜ずし」などさまざまです。昔は米が貴重だったため、すしは特別なごちそうとされ、冠婚葬祭や出世祝い、還暦祝いなどのハレの日には必ずすしを食べる習慣がありました。
その中でも代表的なすしの一つが「押しずし」です。特に挙げられるのが、東洋町の地元料理「こけらずし」です。四角い木枠に酢飯と具材を重ねていく「押しずし」で、カラフルでデコレーションケーキのような見た目が特徴です。具材を重ねる様子は“喜びを重ねる”という意味を込め、縁起物としても伝えられています。
祝いごとや神事に欠かせない「こけらずし」は約130年の伝統があります。具材が入っているが、米をたくさん食べることが目的です。
「こけらずし」は大きなもので、米5升が使われます。木枠から抜いたばかりの「こけらずし」は、箱のような形状で迫力があります。これを食べやすい大きさに切り分けて提供します。東部では焼いた魚を酢に浸し、その酢をすし酢に使う「酢にごし」が行われます。西部では魚の身を酢に入れ、「酢ころし」として楽しまれます。西部では魚が美味しく焼き上げられるように、濡れた新聞を使うことがあります。これにより焦げつかずに魚を楽しむことができます。
かつては家庭で作られることが一般的でしたが、最近ではスーパーマーケットなどで手軽に購入できるようになりました。「こけらずし」は昭和61年(1986年)には「全国おにぎり100選」にも選ばれ、東洋町白浜では毎年1月に「こけらまつり」が開催され、「こけらずし」が振る舞われます。
主な伝承地域:室戸市
主な使用食材:卵、米、人参、しいたけ、魚(サバなど)など