高知のブランドサバ「清水さば」は、瀬付きのゴマサバである。土佐近海においては潮の流れが早いこともあり、よく身が締まった清水サバが水揚げされる。一年を通じて獲れる身近なサバだが、特に秋から冬にかけては脂が乗り、刺身やタタキにしても美味。そんな清水サバを使った「さばの姿寿司」は、神祭や正月に欠かせない料理だ。作り方は地方により異なるものの、翌日に残ったサバの頭やしっぽの部分は、七輪にかけて丸ごと焼いて食べるのが風習である。
県内全域で根付いている食習慣の一環として、冠婚葬祭や神事に欠かせないのが「皿鉢料理」です。これは、土佐弁で宴会を指す「おきゃく」の際に振る舞われ、大きな皿に豪華な料理が盛り付けられます(36cm~39cm程度)。その中でも、「さばの姿ずし」は特に人気があります。新鮮なサバを背開きにし、酢でしめて酢飯でぎっしりと詰め込みます。そして、頭と尾の部分を豪快に盛りつけ、すしを中心に配置します。同様に、「さばの押しずし」もサバを使用した別の一品として、もてなしの席で楽しまれています。高知県では魚を姿のまま調理することが多いのが特徴です。
京都府の「さばずし」も全国的に有名ですが、高知県のものは酢と塩の味付けが特徴的です。これは、使用されるサバの種類に関連しています。京都府で使われるマサバは脂が多く、高知県で採れるゴマサバはそれほどこってりしていません。この違いが味にも影響しています。
「皿鉢料理」が必要ない程度の小さな集まりでは、甘ダイやアジ、カマスなどの姿ずしが提供されます。例えば、「ひめいち(ホウライヒメジ)の姿ずし」は日常の食事として、食堂などで稲荷ずしと一緒によく販売されています。
「さばの姿ずし」は祭りや正月などの祝いの席で振る舞われます。昔は「皿鉢料理」の魚をさばくのは男性の仕事でした。サバは日常の食材としても使われ、新鮮なものは刺身や煮魚、焼き魚として楽しまれます。
「さばの姿ずし」はボリュームがあるため、残ったサバの頭や尾は翌日に焼いて食べることが一般的です。地域によって異なるつくり方がありますが、一般的な手順は新鮮なサバを背開きにし、全体に振り塩して半日から1日冷蔵します。塩が馴染んだら、さらに半日ほど酢に浸し、酢飯を詰めます。使われる酢は地域によって異なり、柚子酢や米酢が使われます。酢飯を詰め終わったらフキンでおさえ、かたちを整え、最後に頭と尾を立てれば完成です。1日ほど置くと、味が馴染み、より美味しく食べることができます。高知のすし飯にはしょうがとごまが入っているのが特徴です。
現在でも「さばの姿ずし」は正月などの特別な日のごちそうとして楽しまれています。手間がかかるため家庭での作り手は減りましたが、仕出し屋や飲食店で提供されています。
主な伝承地域:県内全域
主な使用食材:サバ、各種魚、米、生姜、ごま